一般社団法人 湘南くらしのUD商品研究室
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2022年02月22日
 
UNIFAトーク「交通安全×ファッション」テーマに開催
視認性の高い衣服の重要性を再認識

主任研究員 柳原美紗子

  

  ユニバーサルファッション協会(略称 UNIFA)ではこの1月8日、オンライン研究会vol.5 UNIFAサステナブルトークを開催しました。

  スピーカーは相模女子大学 学芸学部 生活デザイン学科教授 角田 千枝先生です。UNIFA会員で、交通安全未来創造ラボ(日産自動車)特別研究員や(一社)日本高視認性安全服研究所(JAVISA)特別会員も務められています。文化服装学院を卒業後、パタンナーとして様々なアパレルブランドに携わってきた実務家で、お茶の水女子大学大学院で博士(生活工学)を取得。安心・安全な日常生活のための衣服設計をライフワークとし、反射材の衣装提案や、一般市民向けの防災服の開発を目指して研究中です。

  本トークでは「交通安全×ファッション」と題して、交通事故の現状や視認性の高い服装による効果を解説、ファッション視点で実施されている交通安全のためのワークショップの実例などを紹介しました。

  まず交通事故の現状と啓蒙活動の必要性から。色により見え方が違うことを実験で確認します。最も見えやすい色は黄色、次いで白、赤の順、最も見えにくい色は黒や灰色です。この事実が分かっている私たちですが、服の選択では、好みや着やすさを優先し、視認性の高さを第一条件として選ぶ人はほとんどいません。

  交通事故は減少傾向にありますが、目標とする24時間死者数2,000人に未だ達していないのです。死亡事故はその多くが衣服選択により回避できた可能性がある、と考えられているといいます。実際、歩行者の交通事故時間帯を調べると、薄暮時や夜間に多発していて、とくに突出しているのが、子どもの下校時間である夕方の16~18時とのことです。また歩行中の交通死亡事故は年齢別でみると75歳以上が多いそう。交通安全運動は全員が対象ですが、とりわけ子どもや高齢者、障がい者のような交通弱者には視認性を高める服装の配慮が重要といいます。

  それが高視認性安全服で、蛍光色(蛍光イエローやオレンジ)色に視認性を際立たせる反射材(再帰性)を使用した服です。夕暮れや夜目に光の効果で目立ちます。EUやアメリカ、その他多くの国々では路上従事者に対し高視認性安全服の着用が義務付けられていますが、日本では義務化されていません。児童が着用する通学用ベストも、日本では安全規格を定めているところもありますが、普及しているとはいえないのが現状で、東京オリンピックで進むと考えていたそうですが、無観客となり警備に対する需要がなくなって、より難しくなっているといいます。歩行者の死亡事故は依然として多いにもかかわらず、視認性を重視して外出着の色を選ぶ人は多いとは言えず、ましてや反射材付きのファッションやアイテムを身に付けて外出する人は非常に少ない。だからこそ視認性の高い日常着の着用を促す啓蒙活動が必要と強調します。

  次に先生が取り組まれている啓蒙活動について。長年、継続して実施されているという反射材を使用したファッションショーや、反射材普及協会展示会での作品展示、ワークショップなどをプレゼンテーションしました。中でも印象に残ったのは、2019年のおもいやりライトの交通安全運動「TRY LIGHT LIVE 2020」で、角田先生が率いる相模女子大学と北里大学のeye clothesチームが、技術・演技・芸術点第一位を受賞されたことです。(私もこのニュースを見ました) 安全性を担保しながら独創的なクリエイティブを開発、実施したチームに贈られるもので、地域の社会貢献につながる活動として特筆されます。

  さらに今後の活動の課題について、次のように語られました。目立つ衣服は安全ですが、日常着として着用したいかというと 疑問で、着てみたくなるようなデザインを開発したいとのことです。例えばナイキのスポーツウェアやグッチの鮮やかなネオンカラーをアクセントにしたダイアナバッグ、とくに東京パラリンピック閉会式に登場した反射テープを採り入れたデザインには目が釘付けになったそうです。 とはいえすべてを目立たせるというわけではないとも。黒い服も反射材付きですと色に関係なく目立って、外出時で安心ですし、室内なら問題ありません。要は、好みに合うようにどう取り入れていくか、リアルクローズとして落とし込めて活用してもらえるデザインを考える必要があるといいます。

  最後に日常生活で自然に採り入れられるデザイン提案と視認性を考慮したファッションをセレクトできる知識をつける啓蒙活動が大切、と述べて、締めくくりました。反射材など光る素材は、バッグや靴などアクセサリー的なアイテムにはよく使われていますが、服となるとスポーツウェア以外、ほとんどないのが実情です。アパレルにとってここは大きな狙い目ではないかと思いました。コートのようなアウターに細い反射テープが付いていたらより安全です。リメイクという手法もありますね。

  ファッションを楽しみながら、安心・安全に暮らすヒントをいただいたトークイベントとなりました。先生に改めて感謝です。


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