一般社団法人 湘南くらしのUD商品研究室
HOME
2021年02月06日
 
ユニバーサルファッション「人を元気にする力がある」
誰もがファッションを楽しみ続ける社会に
s

主任研究員 柳原美紗子

 昨年11月初旬、東京・渋谷で国内最大級のソーシャルデザインの都市フェスSOCIAL INNOVATION WEEK(SIW)が開催され、ユニバーサルファッションをテーマにしたトークセッションが行われました。題して「ファッションは人を元気にする力がある」です。山形バリアフリー観光ツアーセンター 代表理事の加藤健一さんと、コヒナ (COHINA)代表/ディレクターの田中絢子さんが登壇し、MASATO YAMAGUCHI DESIGN OFFICE代表/デザイナーの山口大人さんがモデレーターを務めました。

山口さんは昨今ファッション業界に旋風を巻き起こしているサステナブルファッションを専門に活動されています。誰もがファッションを楽しみ続ける社会を創ることが、サステナビリティになり得るというヒントをこのセッションから引き出して欲しいといいます。車椅子のために生まれたジーンズ「フライングジーンズ (Flying jeans)」の発案者である加藤健一さんと小柄女子のためのファッションブランド「コヒナ」を運営されている田中絢子さんとの対談は、ファッションがいかに人を豊かにする力があるか、その力がいかに社会をポジティブに変える可能性を秘めているかを伝えてくれました。

ファッションが持つ"人を元気にする力"とは何か、下記は登壇した二人が語った興味深いストーリーです。

世界最軽量の重さ3.5kgの車いすを使用している加藤さんは、通称「空飛ぶ車いす社長」と呼ばれているそうです。山形県南陽市を拠点に、山形バリアフリー観光ツアーセンターの代表理事をはじめ、様々な活動をされています。21歳で筋ジストロフィーを発症し、車いす生活となって一番感じたのはあきらめなければいけないことの多さだったとか。そのバリアを片っ端からこわしていきたい、こんな思いから始めたのが車いすでのフライトだったといいます。地元のハングライダーのフライトエリアは、世界で唯一の障がい者を受け入れる施設だそうです。憧れの福祉国家、デンマークからも多くの観光客が車いすでフライトを楽しんでいかれるとか。こうした「バリアフリーインバウンド」や障がい者用駐車場の塗装作業「ブルーペイント大作戦」などに取り組む中で、「フライングジーンズ」も誕生したといいます。

ジーンズは障がい者にとって穿きにくいアイテムの一つなのですね。車いす利用者は、柔らかくて伸びるスウェットやジャージーパンツで過ごす人が多いといいます。でも皆が当たり前のように穿いているジーンズです。ジーンズのおしゃれをあきらめて欲しくないと思い立ち、丸安毛糸とコラボし、両国の丸和繊維工業の「動体裁断」という特殊な裁断法によって、座った状態できれいにはけるジーンズを開発されました。これにより座ってもウエストラインが下がらず、膝を曲げた時に突っ張る不快感もなく、脱ぎ着しやすくなったそう。裾が上がらないし、不自然なしわも寄らないため、見た目も良くてかっこいい。¥28,000も高価ではないようで、海外からも注文がくるといいます。

はきやすくてシルエットが良いので、座って仕事することの多い健常者にも好評の様子です。これぞユニバーサルファッションのジーンズですね。


続いて登場したのがコヒナ (COHINA)代表/ディレクターの田中絢子さんです。2018年1月に小柄女性向けブランドのコヒナを創業、インスタで知られるようになり、1年半で月商5,000万円を達成、1回のインスタライブで200万円を売り上げるという、今話題の起業家です。

セールスポイントは「アラウンド150 cmの小柄女性を綺麗に見せる服」で、身長155cm以下の女性が対象。日本人女性の平均身長は157cmなので、全体の2~3割に当たるとのことです。田中さんご自身148 cmでとってもキュートで可愛らしい。前職はマーケティングで、アパレルは素人だったそうですが、ご自身に似合う服がなかなか見つからない。身長が低いというだけで、ファッションを楽しむ可能性が閉ざされてしまっていると感じ、それなら創ろうとブランドを立ち上げたといいます。コアな客層は小柄の中でもとくに小さい150 cm以下の小柄さん。彼女たちに向けて、どちらかというとベーシックな服を展開しているといいます。というのもその多くが、皆が当たり前に着ている服を私も着てみたいと思っているからだそうです。一歩先をチャレンジする前に、当たり前を当たり前のように着たい顧客に合わせて品揃えしているとか。

ベーシックというとユニクロがあり、サイズも豊富です。しかしそのSサイズでも大き過ぎて、丈詰め一つとっても、お直し代の方が商品代よりも高くなってしまうそう。そうした悩みをすくいあげているのが、SNSを通じたコミュニケーションといいます。インスタグラムのフォロワーは現在15万人いるとのことです。こんな商品が欲しい、ここのサイズが困っているなど、インスタライブでリアルタイムに客の声を聴き、それを直接商品に反映するモノづくりをしているそうです。生産元の工場とも直接会話しながらつくっているのも特徴で、デザイナーではないからこその商品展開ができていると語ります。 D2C形式で客との距離感を縮め、事前のヒアリングを行って在庫を積まない、DNVB(デジタル・ネイティブ・バーティカル・ブランド)として確立していることが、まさにこのブランド成功の秘密なのですね。

このトークセッションで、フライングジーンズを開発した加藤健一さんは、「このジーンズを穿くとかっこいいと言われる、それがうれしくて外に出てみたくなる」と言われて感激したそうです。コヒナの田中絢子さんは「サイズが合うというだけで社会の一員として認められた気がした」の声を紹介し、服は人の存在にかかわるものだった、服には人を肯定する力があるとコメントされていました。


インデックスに戻る
TOP