一般社団法人 湘南くらしのUD商品研究室
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2019年12月17日
 
国際福祉機器展 「超高齢社会を救う人にやさしいロボット」
介護する人、介護される人を支える

主任研究員 柳原美紗子

 先般、東京ビッグサイトで開催された第46回「国際福祉機器展 H.C.R. 2019」で、信州大学発ベンチャー「アシストモーション(AssistMotion)」が出展し、同社代表の橋本 稔氏が「超高齢社会を救う人にやさしいロボット」と題して講演しました。
 橋本代表はこの春まで信州大学繊維学部の特任教授でした。国際福祉機器展では長年にわたり同大学として参加されていたのです。今年は大学を退官されたこともあり、2017年にご自身 が創設した企業「アシストモーション」で出展されていました。

 講演内容は大きく次の二つでした。
 一つは、ウエアラブル(着る)ロボティックウェア「クララcurara®WR」です。ちなみにWRは、WALKING REHABILITATION(ウォーキング・リハビリテーション)の略です。もう一つは腰サポートウェア「ハイジheige LS」です。
まず「クララ」は歩行をアシストするロボットで、4号機スタンダードモデルには次のような特徴があります。
 (1) 4kgと軽量で、動きやすい。(2)装着が簡単。着脱は1分程度でできて容易。(3)優しいアシスト。装着している人のリズムに合わせて歩行をアシストする。(4)充電一回で2時間使用可能。(5)小回りの利いた歩行ができ、街中を歩いてもそれほど違和感はない。歩幅が広がり速く歩けるようになるなど。 既に病院や介護施設などで実証実験されていて、自立支援に役立っているといいます。
 その上でこのほど新たに開発した起立アシスト制御技術が紹介されました。これまで椅子に座った状態から立つことが一苦労だったのが、この新技術ですっと立ち上れるようになるそう。デモンストレーションも行われました。立つ動作に合わせてロボットが立ち上がりやすくしてくれるといいます。

 次に「ハイジ」です。これは背面に設置されたPVCゲルアクチュエータが伸縮し、筋力をサポートしてくれるものだそう。PVCゲルアクチュエータとは、ポリ塩化ビニル(PVC)を可塑剤によりゲル化した高分子素材で、電圧を印加すると陽極の表面に沿って変形する特異な性質を持っているといいます。この電気応答性を利用して、実現されたのが生体筋肉のように伸縮駆動する世界初の"人工筋肉"なのです。やわらかくて軽量、透明、しかも比較的安価で、国際会議のデモセッションでは最優秀賞を獲得するなど、今大いに注目されているといいます。
 試作機では円筒の中に約2kgのアクチュエータが入っていて、クララの起立アシストもこの筋肉の働きでふんわりと浮くように立ち上がることかできたとか。
とくに挙上動作が楽になるそうで、重さ10 kgもの箱を持ち上げる実演も実施されました。写真はそのときの様子を撮ったものです。 試着されてスイッチが入った途端、引っ張り力が働いて、軽く持ち上げることができたそう。腰への負担が軽くなる効果を実感したとのお話しでした。
 これは今後、介護現場や農作業、建設、運輸など、あらゆる作業シーンで腰の負担を軽減するサポートウェアとして使われることになりそうです。
 最後に、これらをどう事業化していくか、抱負を語られていたのでご紹介します。  「クララ」は2020年の量産化を目指していて、これに先駆け、有償モニタ貸出しをするとのことです。初期費用12万円、月額8万円で、最低でも3ヶ月間使用した感想をフィードバックしていただき、さらなる改良につなげていくそう。このお試し価格で、"着るロボット"をぜひ体感して欲しいといいます。
 「ハイジ」は2021年を目標に製品化に向けて邁進していくとのことでした。

 我が国ではロコモ(運動器症候群)は、"国民病"とまで言われています。変形性関節症と骨粗鬆症に限っても、推計患者数は10年前の統計で4700万人だったそうですから、現在はもっと増えていると思われます。 私もいつか歩けなくなります。でも「クララ」や「ハイジ」で希望を見出せそう。最期まで自立して生きていくために、ウエアラブルロボティックウェアはなくてはならないものになってくるでしょう。早く普及して多くの人々が救われる社会になることを願ってやみません。
このことにご尽力されているアシストモーションの橋本代表に改めて敬意を表します。

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